• ホーム
  • 高齢者・シニア世代に多いトラブル「根面う蝕」

高齢者・シニア世代に多いトラブル「根面う蝕」 konmen

高齢者・シニア世代に多いトラブル「根面う蝕」

「根面う蝕(こんめんうしょく)」とは?

年齢を重ねると、これまで気にしていなかったような口の中の変化や違和感に気づくようになる方が増えてきます。中でも、シニア世代に特に多く見られるトラブルのひとつが「根面う蝕(こんめんうしょく)」です。 これはいわゆる「歯の根元にできる虫歯」のことで、高齢者特有の口腔内環境の変化によって発生しやすくなるものです。しかし、「痛くない」「目立ちにくい」といった特徴があるため、気づいたときには深刻な状態に進行していたというケースも少なくありません。 このページでは、根面う蝕についてわかりやすく解説し、予防法や治療法についてもご紹介します。

そもそも「根面う蝕」とは?

「根面う蝕」は、歯の根っこ(歯根)の部分にできる虫歯のことです。 通常、歯の表面(歯冠)はエナメル質という硬い組織で覆われていますが、加齢や歯周病の進行により歯ぐきが下がってくると、本来歯ぐきに隠れていた根の部分(象牙質)が露出してきます。 この象牙質はエナメル質に比べて非常に軟らかく、酸に弱いため、虫歯になりやすく、しかも進行も早いという特徴があります。

根面う蝕の原因

根面う蝕は、以下のような複数の要因が重なって起こります。

  1. 歯ぐきの後退(歯肉退縮)

    加齢や歯周病、強すぎる歯磨きなどによって歯ぐきが下がると、根の部分が露出し、虫歯ができやすくなります。

  2. 唾液の減少(ドライマウス)

    高齢になると、薬の副作用や加齢自体によって唾液の分泌が減ることがあります。 唾液には虫歯菌の酸を中和する働きがありますが、それが弱まると口腔内が酸性に傾き、虫歯になりやすくなります。

  3. プラーク(歯垢)の付着

    磨き残しが多くなることで、根元の部分にプラーク(細菌のかたまり)がたまりやすくなります。特に根面は形が複雑で、歯ブラシの毛先が届きにくいため、注意が必要です。

  4. 食生活や口腔ケアの乱れ

    間食が多い、甘いものをよく摂る、就寝前のブラッシングを怠るなど、生活習慣が乱れることで虫歯リスクが上昇します。

根面う蝕の症状

根面う蝕の初期段階ではほとんど自覚症状がありません。そのため、気づいたときには進行してしまっていることが多いのが特徴です。 進行すると、以下のような症状が現れます。

  • 歯ぐきとの境目あたりが茶色くなる
  • 冷たいものや甘いものでしみる
  • 歯の根元がへこんでくる
  • 詰め物や被せ物の下で虫歯が進行している
  • 痛みや腫れが出る(重度)

特にブリッジや入れ歯の支えになっている歯が根面う蝕になると、治療が難しくなることもあります。

なぜシニア世代に多いのか?

シニア世代の方は以下の理由から、根面う蝕にかかりやすい傾向があります。

  • 加齢により歯ぐきが下がる(歯肉退縮)
  • 義歯やブリッジの清掃が不十分
  • 手指の衰えで歯磨きが不十分になりやすい
  • 定期検診に通わなくなる
  • 持病による薬の副作用で唾液量が減る

こうした複合的な要因によって、シニア世代では根面う蝕のリスクが非常に高まります。

根面う蝕の予防法

根面う蝕は、正しいケアと定期的なチェックによって予防することが可能です。

1. 正しい歯磨き

  • 歯と歯ぐきの境目を意識して、優しく磨く
  • 毛先のやわらかい歯ブラシを使う
  • フッ素配合の歯磨き粉を使用(特に高濃度フッ素がおすすめ)

補助清掃具の活用

  • 歯間ブラシやデンタルフロスで、プラークのたまりやすい根元を清掃
  • 義歯やブリッジの下も丁寧にケア

3. 唾液分泌の促進

  • よく噛んで食べる
  • 水分をしっかり摂る
  • キシリトールガムなどを活用
  • ドライマウス用の保湿ジェルやスプレーの使用

4. 定期検診とクリーニング

  • 根面の状態は目視だけではわかりにくいため、歯科での定期的なチェックが重要です
  • フッ素塗布、PMTC(専門家による清掃)など、予防ケアを定期的に受けることで進行を防げます

根面う蝕の治療法

治療方法は、進行度によって異なります。

● 初期の場合

→ フッ素塗布や生活習慣の改善で再石灰化を促す。削らずに済むケースもあります。

● 中等度〜重度の場合

→ 虫歯部分を除去し、コンポジットレジン(白い詰め物)や被せ物で補修します。

ただし、根の部分は唾液が入り込みやすく、治療が難しい部位でもあります。進行すると神経の治療や抜歯が必要になることもあるため、早期発見・早期治療がとても重要です。

根面う蝕は“気づきにくい虫歯”

「年齢のせいだから仕方ない」と思いがちですが、正しい知識とケアで防げる虫歯でもあります。 特に、以下のような方は要注意です。

  • 歯ぐきが下がってきたと感じる
  • 唾液が少ない、口が乾く
  • 甘いものが好きでよく食べる
  • 詰め物・被せ物の周囲が黒ずんでいる
  • 最近歯医者に行っていない

思い当たる方は、ぜひ一度ご相談ください。 当院では、高齢者・シニア世代特有のお口の変化に対応したケアを提供しています。根面う蝕を防ぎ、いつまでも健康で快適な生活を送りましょう。